論文レビューメモ

オープンアクセスの論文を一つのテーマに沿って3本ピックアップし、まとめています。2024年は生成AIを論文の執筆や解釈、まとめにどう使えるかを試していきます。

Lactiplantibacillus plantarumの表現型の多様性

植物由来の乳酸菌として最も有名、といっても過言ではないだろうLactiplantibacillus plantarum。株によって栄養要求性、資化性、免疫調整機能、酸・酸素耐性、生育速度、その他もろもろ表現型に多様性があることが知られているけど、実際のところどれくらい違うのかなということで、このテーマで論文をピックアップしています。

今回選んだ3本はこちら。

1. Yu AO et al., Strain diversity of plant-associated Lactiplantibacillus plantarum.

https://ami-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1751-7915.13871

 

2. Mao B et al., Comparative Genomic Analysis of Lactiplantibacillus plantarum Isolated from Different Niches.

www.mdpi.com

 

3. Fuhren J et al., Phenotypic and genetic characterization of differential galacto-oligosaccharide utilization in Lactobacillus plantarum.

www.nature.com

※今更だけど、本当に中国研究者の論文量は凄まじいな。人口が多いからっていうのもあるけども。

 

ChatGPT 3.5 (Aug 3 version) による論文3本のまとめはこちら

これらの3つの論文は、微生物学の観点からLactiplantibacillus plantarum(以前はLactobacillus plantarumとして知られていた)に焦点を当て、微生物の遺伝子、生理学的特性、および健康への影響について調査しています。これらの研究から浮かび上がる共通のテーマ、結果、および結論は、微生物の多様性と適応性が生態系と健康に与える影響を明らかにしています。

これらの研究では、L. plantarum株が異なる環境にどのように適応し、遺伝子の多様性、表現型の違い、および環境への適応についての洞察を提供しています。遺伝子の多様性は、株の異なる環境への適応性に関連しており、遺伝子プロファイルが株の起源や環境に応じて異なることが示唆されています。

また、これらの株は糖質利用、ストレス耐性、および他の生理学的特性においても差異を示しており、遺伝子の多様性と表現型の違いが密接に関連しています。微生物の株ごとの遺伝子プロファイルと表現型の差異は、生態学的適応性を理解するために重要です。

これらの研究から、微生物の多様性と適応性が生態系と健康に与える影響が明らかにされました。微生物の株ごとの遺伝子プロファイルと表現型の差異は、生態学的適応性を理解するために重要であり、将来的には個別に調整された微生物ベースの健康製品や環境保全戦略の開発に貢献するでしょう。

※内容が合っているかどうかはさておき、まとめ方が調子いいときと悪い時がありますね。

 

一口に乳酸菌と言っても特定の宿主に寄生、または共生しているものもあれば、どんな環境にも適応しているものもあり、その生態は多様である。一般に、特定の環境でしか生きられない乳酸菌はそのゲノムサイズが小さくなることが知られている。Lactiplantibacillus plantarumは乳酸菌の中でもゲノムサイズが大きく、どんな環境からも見つかることから、環境非依存的 (nomadicやgeneralistと呼ばれる) な乳酸菌と考えられている。L. plantarumはグルタミン酸に対する栄養要求性を示すことが知られているが、通常の自然界では特定の栄養素が限られる環境はごく僅かであり、その特性は生存を妨げていないようである。

L. plantarumは種内の多様性が大きいことが知られている一方で、16S rRNA遺伝子配列についてはL. plantarum、L. pentosus、L. paraplantarumで極めて似ていることも知られている。保存されている領域と保存されていない領域の差が大きく、タンパク質や脂質の生合成や分解に関与する遺伝子群もよく保存されている一方、炭素源の資化能に関与する遺伝子群には高い多様性を示す。炭素源の資化能とゲノム情報との関連についてはわかっていない部分が大きいため、ゲノム情報から推測される炭素源の資化能と実際の炭素源の資化能が一致しないことが頻繁に起きる。論文1〜3では実際に観察される表現型と遺伝情報との関連、齟齬について調べたもので、特に論文2、3ではオリゴ糖の資化能の遺伝子について確かめたものである。論文3ではガラクオリゴ糖の資化能について明らかにしている。他の乳酸菌種で特定された遺伝子やモチーフ等からL. plantarumで関与する遺伝子を特定したものだが、一方、論文1ではスクロース資化能の予測が、論文2ではラフィノースやフルクトオリゴ糖の資化能の予測ができなかった。L. plantarumにおける2糖以上の炭素源の資化に関与する遺伝子群の予測は限られた糖にとどまっていることから、他の種から類推することができない、L. plantarum独自の遺伝子群が存在する可能性が考えられる。

 

以下はまとめを作るためのメモ

1. 乳酸菌の中にはnomadic (放浪的?)やgeneralistと表現されるグループがある。

Lifestyles in transition: evolution and natural history of the genus Lactobacillus | FEMS Microbiology Reviews | Oxford Academic

↑この論文nomaticの元になっている論文。古い分類の論文だけど、示唆に富むので読んでおこう。L. plantarumは種間の差が大きいことでよく知られている。分離源も多岐に渡るし、宿主もいろいろ。特定の宿主を持つために進化したわけではなさそうに見えるけど、一方で、特定の宿主に適応した結果、いろいろな環境でも生育できるようになった、という考えもできるかも、と言うところからこの研究が始まっている。

さまざまな発酵野菜や発酵穀物からL. plantarumを単離してそのゲノムを比較している。

結論としては同じ分離源から取った株はゲノムがよく似ていた。表現型にも差があった。L. plantarumの生育条件の境界線としてエタノール8%, 12%、NaCl 4%、pH3.5が使われているけど、これは一般的にL. plantarumの境界値なんだろうかね。単離源の違いによって、環境への耐性能が異なる。というか、環境に耐性があるものが増えているから当然と言えば当然。L. plantarumのゲノムサイズは比較的大きく、特定の生育環境に適応した乳酸菌、例えばL. bulgaricus (乳製品) とかApilactobacillus apinorum(ミツバチ)はゲノムサイズが小さく、資化性などの環境適応力が低い。今回単離したL. plantarumの中でもゲノムサイズが小さいものは炭素源の資化性の幅が狭かった。

今、機能がわかっている遺伝子だけでは乳酸菌の表現型を理解しきれていない。特にスクロースの資化性のところ。スクロース-PTSが破壊されているのにスクロースを資化できるので、乳酸菌独自の遺伝子でスクロースPTSと同じ機能を果たす遺伝子が存在するんだろう。こう言う例は他にもありそう。

L. plantarum、L. pentosus、L. paraplantarumの3つを組み合わせながら突っ込んでいくと新しいことがわかるかもしれないね。

2. こちらもL. plantarumの高い多様性について議論したもの。炭素源の資化性に注目。やっぱりL. plantarumの多彩さっていうのは乳酸菌の中でも特殊なんだな。その割にL. plantarumは全部ひっくるめて安全、って言えるのがすごいけど、大丈夫なんだろうかね。

L. plantarumの表現型の多様性が高いとはいうもの、タンパク質と脂質の合成と分解に関する遺伝子は保存されていて、多様性が高いのは糖の輸送と異化に関する遺伝子、ということが知られている。ふむふむ。つまり栄養要求性というのは結構似ているのかもしれないね。炭素源の資化性は結構違う、ということか。そして生育環境とゲノム特性に関連はなく、さらにゲノム特性と表現型の間にも明確な関連がない。つまりは、unknown geneが多すぎるということだな。氏より育ちと言っている麹も、たぶんunknown geneが多すぎてよくわかっていないってことなんだと思うんだよな。資化能の予測にゲノム情報が使えそうなのはセロビオース、マンノース、リボース、フルクトースあたり。前の論文ではスクロースはダメだったということだったけど、この論文でもフルクトオリゴ糖とラフィノースの資化性予測はダメだった。つまり単糖であれば予測できそうだけど、2糖類以上になると難しいのかもしれないね。未知のグリコシド結合を切る酵素があるのかもしれない。

3. ガラクオリゴ糖代謝に関連する遺伝子群の探索。母乳の代わりに与える乳児用のミルクにはガラクオリゴ糖とフルクトオリゴ糖が含まれていて、これらがヒト母乳オリゴ糖と同じように乳児の腸内細菌叢の発達に関与している。ガラクオリゴ糖は成人の健康にも関連していると考えられている。ガラクオリゴ糖の乳酸菌における代謝経路はラクトースパーミアーゼから取り込まれてラクトースとは違う酵素で分解されることが示唆されているけれどもよくわかっていない。

調べてみると、ガラクオリゴ糖の重合度によって分解酵素が変わることがわかった。重合度が4までのものを分解できるグループと、ラクトースガラクトース-グルコースの2糖までしか分解できないグループがあってlacASオペロンがこれに関与していることがわかった。lacSがガラクオリゴ糖の取り込みに重要な役割を持っていそう。それ以外にgalクラスターがあって、ここに配置されている遺伝子群もガラクオリゴ糖代謝に関与していそう。ガラクオリゴ糖で培養するとgalクラスターの発現量が増加する。

オリゴ糖と一口に言ってもグリコシド結合の様式がさまざまにあるので、限られたオリゴ糖しか代謝できないというのはよくあるし、それも多様性の一部ということになる。