論文レビューメモ

オープンアクセスの論文を一つのテーマに沿って3本ピックアップし、まとめています。2024年は生成AIを論文の執筆や解釈、まとめにどう使えるかを試していきます。

"Ropy" 乳酸菌と宿主への健康効果 (2)

先週からの続き。今週まとめるのはこちらの2報

2. Lee MG et al., Potential Probiotic Properties of Exopolysaccharide-Producing Lacticaseibacillus paracasei EPS DA-BACS and Prebiotic Activity of Its Exopolysaccharide.

www.mdpi.com

3. Yamane T et al., Exopolysaccharides from a Scandinavian fermented milk viili increase butyric acid and Muribaculum members in the mouse gut. 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666566221000332

 

乳酸菌が作る菌体外多糖 (EPS) の研究は、乳酸菌で発酵した食品に特徴的な物性を与えるという観点からの研究だけでなく、EPSがもつ機能性、特に健康効果について精力的に研究が行われている。これは乳酸菌が小腸において、腸管内でEPSが接着剤となり、乳酸菌が腸管にくっつきやすくなり、定着を促す、と考えられているからである。EPSが持つ機能性としては、抗炎症作用、抗酸化作用、抗がん作用、抗生物質様作用などが研究されている。

論文1ではLactcaseibacillus rhamnosusのEPS産生株の抗炎症作用について調べた。その結果、EPS産生株では抗炎症作用が見られなかった。一方で、Lactiplantibacillus plantarumやBifidobacterium longumではEPS産生株で抗炎症作用が見られた、という報告があり、EPSの抗炎症作用についてはEPS以外の因子も関与していることが示唆された。EPS産生株が持つ別の特性が関与しているのかもしれない。

論文2ではLactcaseibacillus paracasei EPS DA-BACS株が作るEPSの機能について評価した。バチルス属、クロストリジウム属や大腸菌等の細菌に対してやカビ等の真菌に対して抗生物質として働く一方、乳酸菌やビフィズス菌に対しては生育促進効果があり、種によって効果が正反対になる特徴を持っていた。メカニズムについてはまだ不明である。この他にも抗炎症作用や、バイオフィルムとして、外界ストレスから守る機能なども評価され、さまざまな健康効果を持つ乳酸菌であるということが示唆されている。

論文3ではヴィーリーというヨーグルトから単離したLactococcus lactisが作るEPSをマウスに摂取させて、EPSの効果を評価した。その結果、糞便において、腸の健全性を示すマーカーと考えられているMuribaculumの相対頻度が上昇したり、短鎖脂肪酸である酪酸の濃度低下が抑制される現象が確認された。

このようにEPSとEPSを作る乳酸菌にはさまざまな健康効果があることが期待されているが、EPSそのものの効果とEPSを作る乳酸菌が持っている効果を切り分けながら評価する必要があるだろう。

 

以下はまとめを作るためのメモ

2. 菌体外多糖を作る乳酸菌の報告はいくつかある。その中で抗がん活性のあるEPSを作ると報告されているLacticaseibacillus paracaseiに着目。EPS産生株の単離とEPSの機能について調べた。単離したのはL. paracasei EPS DA-BACS株。

EPS産生の実験ではスクロースを使うことが多いけど、これはスクロースの方が作りやすいということなんだろうか?クリスタルバイオレットでEPSって薄く染まるんだな。これは見やすい。

EPS構成糖はマンノースとグルコースが2:1くらいの割合。マンノース多いな。MRS培地由来のマンノースも結構入っていそうだけど、どうなんだろうかね。Lactobacillusの一般的なEPSの構造はグルカン(グルコースだけでできている)マンナン(マンノースだけでできている)グルコマンナングルコースとマンノースでできている)ということらしいけど、本当かな。ポリマー構造も見ているから、ちゃんとやってるんだろうけど。うーん。

EPSがバイオフィルムになってストレス環境下で生き延びやすくなる。プロバイオティクスの基準として腸管内での生存が必要とされている。

クロストリジウム属の細菌 (Clostridium difficile) に対する生育抑制効果がある。それ以外にもBacillus subtilis Psudomonas aeruginosa Staphylococcus aureus Escherichia coliなどにも効果あり。グラム+、ー満遍なく、って感じね。抗真菌作用もあり。マンノースがそんなに効果出すんかねぇ。。。ちょっと考えにくいけども。。。

抗炎症作用もあるし、Bifidobacterium属には生育促進作用がある。うーん。種や属によって作用が異なるっていうのは一体どういう仕組みなんじゃろうか?

 

3. フィンランドでよく食べられているヴィーリーというヨーグルトのスターターから単離したLactococcus lactisのEPSについて調べた論文。EPSの構造が新しいこと、マウスに経口摂取させたところ糞便中のMuribaculumのabundanceが増加したことと、酪酸量が増えた、という報告。

EPSの産生は牛乳を使っている。牛乳に含まれている多糖っていうのはないものなのかね。

Muribaculumは炎症性サイトカインの増加と負の相関があること、腸管のタイトジャンクションタンパク質 (mucin2) の発現量と正の相関があることが知られている。なのでMuribaculumが多い方が腸管が健全、と考えられるみたい。経口摂取したらMuribaculumのabundanceが2倍になった。EPSが増えたからMuribaculumが増えたのであって、タイトジャンクションタンパク質が増えたり、炎症性サイトカインが減ったりしたわけではないとすると、いいんだか悪いんだかって感じがしないでもない。本質的には炎症性サイトカインの発現量・誘導量が減った、とかmucin2の発現量が増えた、という見せ方が本質のような気もするけども。

短鎖脂肪酸である酪酸が通常は減少していくのをEPSを与えることでそれを防ぐことができる、という結果。ふむふむ。

EPS研究の最終的な出口はヘルスクレームって感じなのかしらね。。。