論文レビューメモ

オープンアクセスの論文を一つのテーマに沿って3本ピックアップし、まとめています。2024年は生成AIを論文の執筆や解釈、まとめにどう使えるかを試していきます。

食品科学で最も注目されるトピック2023

Perplexity AIとChatGPTを組み合わせた論文レビューの方法について実験中。

Perplexity AIで漠然としたテーマを投げて、返ってきた答えに沿って論文を探してChatGPTでまとめてもらう、という流れで試す。

今回のテーマは「2023年で食品科学分野で最も注目されているトピック」。これをPerplexity AIに投げてみると

持続可能な実践:気候変動がこれまで以上に注目される中、ますます多くの消費者が持続可能な考え方を採用する企業を支持しようとしています。これには食品廃棄物の削減、サプライチェーンの緊密化、および再生可能エネルギーの利用が含まれます。

健康的な食品と植物ベースの食事:健康的な食品と植物ベースの食事の関心が高まっています。消費者は体に何を入れるかについてより注意を払い、今では一口で複数の要素を提供できる食品を求めています。

食品安全とサプライチェーン:食品安全プロセス、研究データ、および追跡原則はすべて貿易を促進し、危機時の柔軟性を向上させます。世界と地元の調達をバランス良くするために、耐久性のあるサプライチェーンの構築が重要であり、必須の革新、サプライチェーンおよびデジタル技術、追跡性、および新しい方法で世界的な食品システム全体で効率を向上させる必要があります。

持続可能な食品生産:2050年までに世界人口が98億人に達すると予測されているため、食品技術のイノベーションは食品の入手可能性を増やし、それに伴う廃棄物を大幅に減少させるために効率的かつ手頃な方法を開発する必要があります。より実用的で持続可能なアプローチには、食品生産と栄養への新しい拡張的なアプローチが求められます。また、主要な環境および社会問題も考慮する必要があります。

食品ラベルの変更:これまで以上に多くの人々を養う必要があるため、果物と野菜が最初にラベルの変更の対象となったようです。Sainsbury’s、Waitrose、およびM&Sなどが2022年だけで数百の果物と野菜製品のラベルを変更しました。一部の食品製品では賞味期限が過去のものになりつつあり、食品廃棄物を減少させる動きがさらなるラベルの変更を促進する可能性があります。

植物中心の食事と植物ベースのたんぱく質:植物中心の食事、植物ベースのたんぱく質、および植物ベースの食品がますます人気を集めています。これは、人々がより持続可能なライフスタイルに向かう中で、植物ベースの料理が人気を博しているためです。

パワフルなキノコ:キノコは依然として料理のトレンドとして高い評価を得ています。動物性たんぱく質に類似した広範なアミノ酸を含むため、多くの料理で人気のある材料となっています。

複数のものが挙げられている様に見えるけど、結局のところ「植物性の食品」と「フードロス削減」の2つに集約されている様な感じ。植物性食品強いな。

家畜の存在を否定するというわけではないんだろうけど、持続可能な家畜の利用、というところに戻そうというのが今のトレンドなのかもしれない。スケールを小さくすることで単価は高くなるだろうけど、それでいいんじゃないか、ということなのかしら。

これらの問題を解決するために科学がどう関わることができるのか、っていうところがポイントなんだろうね。

ちなみにChatGPTにこれをまとめてもらうと

食品業界は持続可能性と健康志向に重点を置いて進化しています。

持続可能性と健康志向か。そうか。健康志向ね。

「植物性食品」と「持続可能性」のキーワードでPubmed検索してこちらの論文をピックアップ。

Craig WJ et al., The Safe and Effective Use of Plant-Based Diets with Guidelines for Health Professionals. Nutrients. 2021 13(11):4144. doi: 10.3390/nu13114144

www.mdpi.com

ChatGPT (GPT-3.5)でまとめてもらうとこちら。

植物ベースの食事(ヴィーガンおよびラクト-オボ-ベジタリアンを含む)は、西洋で人気を集め、人間の健康と地球の健康に対する懸念など多岐にわたる理由から注目されています。これは肉ベースの食事よりも環境的に持続可能で、温室効果ガスの排出量が低いという環境的な利点があります。植物ベースの食事は心血管疾患、がん、糖尿病、肥満、骨粗鬆症などでの予防および治療の役割を科学的データから概説しました。植物ベースの食事は全てのライフサイクル段階で安全で効果的であり、様々な栄養素に対する懸念も議論されています。

 

自分でまとめるのは来週に持ち越し。

 

以下はまとめを作るためのメモ

植物性食品で栄養を取ろうとすると、ビタミンB12、カルシウム、ビタミンD、鉄、亜鉛、オメガ3脂肪酸が不足する。発酵で増えそうなのはビタミンB12ビタミンDとオメガ3脂肪酸。オメガ3脂肪酸を発酵で作る微生物を見つけてくるっていうのはありかもしれん。これは次回の文献調査に含めてみよう。

 

新規抗生物質の見つけ方

今週も新しいやり方を試してみます。

今週のテーマは「新規抗生物質の見つけ方」。

Perplexisy AIに投げてみると、こんな回答。

新しい抗生物質を発見する方法 新しい抗生物質を発見することは、厳格な科学的研究と開発を必要とする難しい過程です。このプロセスは通常、以下のステージを含みます。

  1. 発見と特性の解明

  2. 研究室では、科学者たちは異なる源からの様々な化合物をテストし、植物、動物、菌などから得られるこれらの化合物が異なる細菌に及ぼす影響を調査します。このステージでは、潜在的抗生物質の化学的、構造的、生物学的活性を研究し、それらの安全性、純度、有効性を確認します。

  3. 革新的なアプローチ

  4. 人工知能を使用してヒトプロテオームをスクリーニングし、ペプチド抗生物質の可能性を見つけるといった革新的なアプローチが新しい抗生物質の候補を特定するために採用されています。このアプローチは抗菌特性を持つ新規分子を発見するという有望な成果を示しています。

  5. 投資と協力

  6. 新しい抗生物質の開発への投資は、特に天然物由来および合成小分子の分野で重要です。学術界と製薬業界などの外部出資者との協力も新しい抗生物質の開発を進める上で重要です。

  7. 耐性の克服

  8. 抗生物質耐性の課題に対処するために、研究者は常に新しい標的を求め、既存の耐性が存在しない抗生物質の開発を進めています。

まとめると、新しい抗生物質の発見には多面的なアプローチ、革新的な戦略、そして相当な投資が必要であり、抗微生物耐性の増加という成長する脅威に対抗するために重要です。

前AI時代の抗生物質の見つけ方って、とにかくありとあらゆるサンプルをターゲットとする生物に試しまくって効果のあるものを泥臭く見つけてくる、というイメージですが、今はもうちょっとスマートにできるものなんだろうかね。

イメージとしては、ターゲットとするタンパク質の構造がコンピューター上で再現できて、コンピューター上で相互作用を計算して、効果がありそうな物質を選ぶ、ということができる様になるんだと思う。思うけど、既存の物質で効果があることがわかるんだったらそれって新規じゃないな、ということになるし、新たに物質をコンピューター上で組み立てて、それが効果ありそう、となってもどう合成するんじゃろうか、ということにもなる。どっちから攻めるのがいいのかねぇ。どっちもやるのがいいんだろうね。

「革新的なアプローチ」で引用されていた論文(というか記事)はということを言っているのかと思いきや、

www.nih.gov

全然違った。まあ、そうか。上に書いたのはもう10年以上前から模索されているやり方だからな。むしろ「シミュレーションを使った古典的探索方法」になるのかもしれない。この記事で紹介されている論文は、ヒトのタンパク質の中から、ペプチドの長さ・電荷・疏水度・物理化学的な特性を基準にしてスクリーニングしてきたら、2603パターンのペプチドが何かしらの抗生物質としての機能を持っていた、という報告。「ターゲットタンパク質との相互作用で〜」、とかっていうのは古いってことなのかしらね。。。

そうなると、有象無象のサンプルをターゲットにためしまくる、というのとあまり変わらない力技って感じもするけど、物理的な労力なのか、計算上の労力なのかの違いは大きいか。

未知の糖または糖派生物の同定方法

多糖の構成糖を知りたいのだけど、なかなかうまくいかない。

というわけで、Perplexity AIに文献を集めてもらうとこんな感じ。(回答をChatGPT3.5で翻訳)

未知の糖類または糖誘導体分子の化学構造を特定することは、それらの複雑な構造と複数の官能基の存在により難しい場合があります。ただし、未知の糖類または糖誘導体分子の構造を特定するために使用できるいくつかの方法があります。以下は使用できるいくつかの方法です。

定性試験:未知の糖を特定するために、一連の迅速な試験管定性化学試験が使用されることがあります。これらの試験は、化合物に関する情報を提供し、炭水化物をその構造タイプに従って分類するのに役立ちます。例えば、オサゾン誘導体の融点は各化合物に特有であり、糖の同定に使用できます。

核磁気共鳴(NMR)分光法:NMR分光法は、未知の糖または糖誘導体分子の構造を高い精度で決定するために使用できます。NMRスペクトルは、分子中に存在する官能基を特定するのに役立ち、分裂パターンと化学シフトは原子の連結性を決定するのに役立ちます。

質量分析(MS):MSは未知の化合物の分子式を決定するために使用できます。これにより、分子中の各元素の原子数がわかります。

燃焼分析:燃焼分析も未知の化合物の分子式を決定するために使用できます。

溶液NMRアプローチ:水酸基を出発点として炭水化物の化学構造を決定するために、溶液NMRアプローチが使用されることがあります。このアプローチは、モノサッカライドであるグルコースを未知のように扱い、またNMRを完全に割り当てることによって具体的なものとされます。

分子構造の決定を達成するための利用可能な技術は限られており、理論的な分子構造計算の更なる開発の余地があることに留意することが重要です。ただし、上記で説明した方法は、化学の分野で未知の糖類または糖誘導体分子の化学構造を特定するために一般的に使用されています。

 

文献が6つ示されたけど、目的に合ってる情報を提示してくれる文献はこの3つでした。

Isolating, Identifying, Imaging, and Measuring Substances and Structures - Beyond the Molecular Frontier - NCBI Bookshelf

SPECTROSCOPY AND STRUCTURE DETERMINATION

https://www1.udel.edu/chem/CHEM322/Handouts/unknowns_lab_handout.pdf

 

※大学の機器分析の授業で習ったけど、具体的にイメージができなくて結構わからないなぁと思いながらだったんだよな。

 

糖類はやっぱり難しそう。立体異性体がむちゃくちゃあるしな。還元力を見る、燃焼分析でCH比を見る、というのも確かにあるけど、専用の装置もいるし、どうやらNMRが最初の選択肢かも。

それなりの濃度がいるから、こうなるとひたすら単離生成を続けて分析する試料の量を確保するっていうのがいいのかもしれないな。。。

EPSが曳糸性を示す理由

EPSが曳糸性を示す理由として構成糖の特徴があるのかなと推測していたけども、改めてこれについて情報収集。

Perplexity AIに聞いてみると答えはこんな感じ。

※Perplexity AIの答えをChatGPTで翻訳したもの

乳酸菌(LAB)によって生成される外部多糖(EPS)は、発酵食品の質感と粘度に寄与することが知られています。いくつかのLAB株は、EPSが「ねばり気」の特性を示すことがあり、これはEPSが食品に特有のヌルヌルした質感を与える長くて細い構造を形成することを意味します。このねばり気の特性は、EPSの分子量、電荷、および枝分かれ構造に影響を受ける物性によって引き起こされます。ヨーグルトやケフィアなどの一部の発酵食品では、ねばり気の特性が望まれます。なぜなら、これが製品の滑らかでクリーミーな質感に貢献するからです。

LABが生成するEPSのねばり気の正確なメカニズムは完全に理解されていませんが、環境要因(pH、温度、栄養素の利用可能性)が影響を与えることが研究で示されています。例えば、窒素の制限は特定のLAB株においてEPSの生成を刺激することが示されています。また、EPSの生成はEPS生合成に関与する特定の遺伝子の存在など、遺伝子要因にも影響を受けます。

要約すると、LABによって生成されるEPSのねばり気の特性は、環境要因と遺伝子要因によって引き起こされるEPSの物理的特性によるものです。

EPSの分子量、電荷、枝分かれ構造がまずは最終的な要因。EPSがどんな特徴を持つかは環境要因に影響を受ける。しかし自分の研究結果から考えると、生合成されるEPSは常に同じような気がする。作られるものは同じだけど、環境によってはropyになったりならなかったり、ということなのかもしれないね。

Perplexity AIが引っ張ってきた論文の中で、EPSの分子量、電荷、枝分かれ構造が重要だと言っている論文と、遺伝子要因を言っている論文の2つを詳しく見ていくことにします。

1. Werning, M.L. et al., Biological Functions of Exopolysaccharides from Lactic Acid Bacteria and Their Potential Benefits for Humans and Farmed Animals. Foods 2022, 11, 1284. https://doi.org/10.3390/foods11091284

www.mdpi.com

2. Jurášková, D et al., Exopolysaccharides Produced by Lactic Acid Bacteria: From Biosynthesis to Health-Promoting Properties. Foods 2022, 11, 156. https://doi.org/10.3390/foods11020156

www.mdpi.com

 

1. いきなり出鼻を挫かれるけど、この論文ではEPSの分子量、電荷、枝分かれ構造はEPSの曳糸性に関連する、とは書いてない。分子量が大きいEPSは腸管に接着するのを妨げることは報告されている。この他、抗酸化性、免疫調整機能、抗生物質機能が分子量や電荷と関連する報告あがある。

※Perplexity AIもそこまで精度は出ないのかもしれない。

でもこのレビューはよくまとまっているので、2022年時点での乳酸菌のEPS研究の概要を把握するにはよさそう。

2. EPSを作るのに必要な代謝経路は、原材料となる糖ヌクレオチドを生合成する経路、グリコシルトランスフェラーゼ、またはアセチルトランスフェラーゼ。そして重合反応や膜外輸送タンパクが必要。EPS生成は基本的にはエネルギー消費反応。

※ポリマーを分解して得た単糖にリン酸基をつけて、もう一回重合するなんてエネルギー的にはかなり不利なはず。でもそれをやるということは何か理由があるんだろうね。

このレビューもよくまとまっているのでEPS研究を理解するのによさそう。

 

※新しい方法での論文のまとめ方を模索中です。。。。

ガラクトースとグルコースで構成される菌体外多糖の健康効果

かなりピンポイントなターゲットだけど、今回はこちらのテーマで論文を検索。

ラクオリゴ糖は日本ではトクホ成分として認められているけど、ガラクオリゴ糖の規格が製造方法を含めてガッチリ固められているので、ガラクトースグルコースを含む菌体外多糖を化学的には同一のもの、とすることはできない。海外ではどういう扱いなのかは気になるところ。

まずはperplexity aiで論文をピックアップしてもらうとこんな感じ。

 

エキソポリサッカライド(EPS)は、ガラクトースブドウ糖から構成される健康上の利点は、その特定の構造、出典、および摂取者によって異なる可能性があります。以下はEPSに関連付けられるいくつかの潜在的な利点です。

1. プレバイオティック効果:EPSは有益な腸内細菌の栄養源となり、その増殖と活動を促進します。これは健康な腸内細菌叢と消化機能の改善に寄与する可能性があります。(3)

2. 免疫調節特性:一部のEPSは免疫システムを刺激することが分かっており、病原体や疾患に対する身体の防御機構を強化する可能性があります。(1)

3. 抗酸化活性:特定のEPSは抗酸化特性を示し、細胞を酸化から保護し、慢性疾患のリスクを減少させることができます。(6)

4. 抗炎症効果:異なる出典からのEPSは、身体の炎症反応を調節する能力を示しており、炎症性疾患の管理に寄与する可能性があります。(1)

5. 潜在的な抗がん特性:さらなる研究が必要ですが、一部の研究ではEPSが抗腫瘍効果を有する可能性があり、がん治療の補助として利用される可能性が示唆されています。(1)

6. 食品産業におけるテクノ機能的応用:EPSは食品製品の乳化剤、安定剤、および食感調整剤として利用され、その感覚的な質と栄養的な特性に貢献します。(5)

ただし、EPSの健康上の利点はまだ研究中であり、その作用メカニズムと潜在的な応用を完全に理解するためにはさらなる研究が必要です。また、EPSに対する個々の反応は異なる可能性があり、これらの化合物を大量に摂取すると消化に不快感を感じる場合があることに注意する必要があります。

1. Cytotoxicity activities and chemical characteristics of exopolysaccharides and intracellular polysaccharides of Physarum polycephalum microplasmodia

2. Effect of galactose and glucose on the exopolysaccharide production and the activities of biosynthetic enzymes in Lactobacillus casei CRL 87 
3. Feeding Lactic Acid Bacteria with Different Sugars: Effect on Exopolysaccharides (EPS) Production and Their Molecular Characteristics
4. Exopolysaccharide-Producing Lactic Acid Bacteria – Health ...
5. Exopolysaccharides from lactic acid bacteria: Techno-functional application in the food industry
6. Production, Characterization, and Antioxidant Activities of an Exopolysaccharide Extracted from Spent Media Wastewater after Leuconostoc mesenteroides WiKim32 Fermentation

EPSの一般的な特徴、という感じなのでグルコースガラクトースで構成されるEPSに特化した研究っていうのはまだなのかもしれない。

 

というわけで、ガラクトースグルコースから構成される菌体外多糖の報告を調べてみるものの、この2つの糖だけでできている菌体外多糖を作る乳酸菌の報告がオープンアクセスでは見つからず、今週は時間切れ。

あるテーマで毎週論文3本をまとめるっていうのはちょっと無理が出てきているので、少し計画を見直します。。。

今週もお休み

別件の調べ物があり、今週も論文レビューはお休みです。

来週からは論文の選び方を変更しまして、Perplexity AIを使って論文を選び、まとめを作ってみることにします。Perplexity AIとChatGPT、そして私の3者のまとめ方の違いを比べてみることにします。

Perplexity AIはこちら。

https://www.perplexity.ai/

"Ropy" 乳酸菌と宿主への健康効果 (2)

先週からの続き。今週まとめるのはこちらの2報

2. Lee MG et al., Potential Probiotic Properties of Exopolysaccharide-Producing Lacticaseibacillus paracasei EPS DA-BACS and Prebiotic Activity of Its Exopolysaccharide.

www.mdpi.com

3. Yamane T et al., Exopolysaccharides from a Scandinavian fermented milk viili increase butyric acid and Muribaculum members in the mouse gut. 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666566221000332

 

乳酸菌が作る菌体外多糖 (EPS) の研究は、乳酸菌で発酵した食品に特徴的な物性を与えるという観点からの研究だけでなく、EPSがもつ機能性、特に健康効果について精力的に研究が行われている。これは乳酸菌が小腸において、腸管内でEPSが接着剤となり、乳酸菌が腸管にくっつきやすくなり、定着を促す、と考えられているからである。EPSが持つ機能性としては、抗炎症作用、抗酸化作用、抗がん作用、抗生物質様作用などが研究されている。

論文1ではLactcaseibacillus rhamnosusのEPS産生株の抗炎症作用について調べた。その結果、EPS産生株では抗炎症作用が見られなかった。一方で、Lactiplantibacillus plantarumやBifidobacterium longumではEPS産生株で抗炎症作用が見られた、という報告があり、EPSの抗炎症作用についてはEPS以外の因子も関与していることが示唆された。EPS産生株が持つ別の特性が関与しているのかもしれない。

論文2ではLactcaseibacillus paracasei EPS DA-BACS株が作るEPSの機能について評価した。バチルス属、クロストリジウム属や大腸菌等の細菌に対してやカビ等の真菌に対して抗生物質として働く一方、乳酸菌やビフィズス菌に対しては生育促進効果があり、種によって効果が正反対になる特徴を持っていた。メカニズムについてはまだ不明である。この他にも抗炎症作用や、バイオフィルムとして、外界ストレスから守る機能なども評価され、さまざまな健康効果を持つ乳酸菌であるということが示唆されている。

論文3ではヴィーリーというヨーグルトから単離したLactococcus lactisが作るEPSをマウスに摂取させて、EPSの効果を評価した。その結果、糞便において、腸の健全性を示すマーカーと考えられているMuribaculumの相対頻度が上昇したり、短鎖脂肪酸である酪酸の濃度低下が抑制される現象が確認された。

このようにEPSとEPSを作る乳酸菌にはさまざまな健康効果があることが期待されているが、EPSそのものの効果とEPSを作る乳酸菌が持っている効果を切り分けながら評価する必要があるだろう。

 

以下はまとめを作るためのメモ

2. 菌体外多糖を作る乳酸菌の報告はいくつかある。その中で抗がん活性のあるEPSを作ると報告されているLacticaseibacillus paracaseiに着目。EPS産生株の単離とEPSの機能について調べた。単離したのはL. paracasei EPS DA-BACS株。

EPS産生の実験ではスクロースを使うことが多いけど、これはスクロースの方が作りやすいということなんだろうか?クリスタルバイオレットでEPSって薄く染まるんだな。これは見やすい。

EPS構成糖はマンノースとグルコースが2:1くらいの割合。マンノース多いな。MRS培地由来のマンノースも結構入っていそうだけど、どうなんだろうかね。Lactobacillusの一般的なEPSの構造はグルカン(グルコースだけでできている)マンナン(マンノースだけでできている)グルコマンナングルコースとマンノースでできている)ということらしいけど、本当かな。ポリマー構造も見ているから、ちゃんとやってるんだろうけど。うーん。

EPSがバイオフィルムになってストレス環境下で生き延びやすくなる。プロバイオティクスの基準として腸管内での生存が必要とされている。

クロストリジウム属の細菌 (Clostridium difficile) に対する生育抑制効果がある。それ以外にもBacillus subtilis Psudomonas aeruginosa Staphylococcus aureus Escherichia coliなどにも効果あり。グラム+、ー満遍なく、って感じね。抗真菌作用もあり。マンノースがそんなに効果出すんかねぇ。。。ちょっと考えにくいけども。。。

抗炎症作用もあるし、Bifidobacterium属には生育促進作用がある。うーん。種や属によって作用が異なるっていうのは一体どういう仕組みなんじゃろうか?

 

3. フィンランドでよく食べられているヴィーリーというヨーグルトのスターターから単離したLactococcus lactisのEPSについて調べた論文。EPSの構造が新しいこと、マウスに経口摂取させたところ糞便中のMuribaculumのabundanceが増加したことと、酪酸量が増えた、という報告。

EPSの産生は牛乳を使っている。牛乳に含まれている多糖っていうのはないものなのかね。

Muribaculumは炎症性サイトカインの増加と負の相関があること、腸管のタイトジャンクションタンパク質 (mucin2) の発現量と正の相関があることが知られている。なのでMuribaculumが多い方が腸管が健全、と考えられるみたい。経口摂取したらMuribaculumのabundanceが2倍になった。EPSが増えたからMuribaculumが増えたのであって、タイトジャンクションタンパク質が増えたり、炎症性サイトカインが減ったりしたわけではないとすると、いいんだか悪いんだかって感じがしないでもない。本質的には炎症性サイトカインの発現量・誘導量が減った、とかmucin2の発現量が増えた、という見せ方が本質のような気もするけども。

短鎖脂肪酸である酪酸が通常は減少していくのをEPSを与えることでそれを防ぐことができる、という結果。ふむふむ。

EPS研究の最終的な出口はヘルスクレームって感じなのかしらね。。。