論文レビューメモ

オープンアクセスの論文を一つのテーマに沿って3本ピックアップし、まとめています。2024年は生成AIを論文の執筆や解釈、まとめにどう使えるかを試していきます。

乳酸菌が作る菌体外多糖の構造

乳酸菌が作る多糖は仕事でもちょいちょい調べているんだけども、改めて最新の報告について眺めてみようと思って論文をピックアップ。多糖そのものにどんな種類があるのかというところの情報収集。

乳酸菌の菌体外多糖に関する研究は、多糖の構造か、多糖の機能かのどちらかに集約されている印象。構造についてはまずは1種類の単糖がつながっているhomopolysaccharideか、2種類以上の多糖がつながっているheteropolysaccharideかでわかれ、2種類以上だと、その単糖の種類とポリマー構造を明らかにするというところが軸。機能となると、ざっと見たところ、抗がん作用か抗菌作用に着目した研究が多いのかなという印象。口腔内・腸内をはじめとする微生物群集の摂動要因としての報告もあるね。

今回ピックアップした多糖の構造に着目した論文3本はこちら

1. Bengoa AA et al., Exopolysaccharide-producing Lacticaseibacillus paracasei strains isolated from kefir as starter for functional dairy products.

www.frontiersin.org

 

2. Wang B et al., Structural characterization and partial properties of dextran produced by Leuconostoc mesenteroides RSG7 from pepino.

www.frontiersin.org

 

3. Fuso A et al., Feeding Lactic Acid Bacteria with Different Sugars: Effect on Exopolysaccharides (EPS) Production and Their Molecular Characteristics.

www.mdpi.com

CharGPT (Aug 3 version) による3論文のまとめはこちら

これらの3つの論文は、外分泌多糖類(EPS)に関する共通のテーマに焦点を当てており、微生物が生成するこれらの複雑な分子の特性や応用に関する課題を探求しています。

  1. 論文1は、乳酸菌によって産生されるEPSが乳製品業界において重要な役割を果たすことに着目しています。特に、Lacticaseibacillus paracasei株が産生するEPSの特性とその流動特性への影響、そしてサルモネラ感染への保護効果について研究しています。発酵温度の変化がEPSの特性に影響を与え、その変化が流動特性や保護効果にも影響を及ぼすことが示されました。

  2. 論文2では、乳酸菌によるEPSの多様な生物活性と商業開発への潜在的な利用に焦点を当てています。特に、RSG7菌株が生成するEPSの特性と応用可能性を詳細に検証しています。そのデキストランの構造や物理化学的特性が、食品応用における価値ある要素として論じられています。

  3. 論文3は、異なる乳酸菌株のEPS生産能力やその構造に関する調査を通じて、食品システムでの利用の可能性を探求しています。さまざまな糖を炭素源として使用した場合のEPS量や構造の違いが明らかにされ、異なる株と条件で異なる応用が考えられることが示唆されています。

これらの論文は共通して、微生物が生成するEPSが食品業界における多様な応用可能性を持つことを示しており、特にその特性や生成条件が応用に大きな影響を与えることが明らかにされています。したがって、将来的な研究や産業応用においては、微生物の選択や環境条件の調整によって、さまざまなEPSの特性を最大限に活用することが重要であることが示唆されています。

※ 最近は一発で上手にまとめられてるような気がしてる。

 

乳酸菌が作る菌体外多糖は、乳酸菌で発酵させた原料の物性を変化させたり、ヒトの健康に良い効果を与えることが報告されている。そのため、依然として注目度の高い研究トピックとなっている。加えて、コロナウイルス感染症をきっかけとした世界規模での「免疫」に対する関心は、健康に良い効果をもたらすと考えられている発酵食品の研究をさらに加速させることとなり、その大きな流れの中で乳酸菌の菌体外多糖の研究を進められている。

乳酸菌が作る多糖には菌体表面に緩く結合し、場合によっては環境中に放出されるもの(菌体外多糖)と、菌体表面に強く結合している多糖(莢膜多糖)がある。菌体外多糖に着目すると、多糖の構造としては、ただ1種類の単糖が連結してできるhomopolysaccharideと、複数種類の単糖が連結してできるheteropolysaccharideがある。homopolysaccharideの単糖としてはフルクトースとグルコースが知られている。一方、heteropolysaccharideの単糖としては様々であるが、当然のことながら乳酸菌の代謝経路中に存在する糖が使われる。多くの場合、リボース、アラビノース、フコース、ラムノース、マンノース、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトースとグルコサミン、N-アセチルグルコサミン、ガラクトサミンのいずれかで構成されている。

生成される多糖量は乳酸菌の代謝速度・生育速度に影響を受けることが想定されるため、培養温度によって生成量は変化すると推測される。同時に乳酸菌は各種分解酵素を菌体外に分泌するため、多糖分解酵素の活性にも影響を受ける。これらのファクターが相互に影響し合い、最終的な多糖生産量が決定されると言える。この点について検討を行ったのが論文1である。Lacticaseibacillus paracaseiの異なる3株について検討したが、株によって温度の影響が異なることがわかった。ある株はほとんど影響がないか、高温で培養した方がより生成量が増える一方、低温で培養した方が生成量が増える株もあった。多糖を構成する単糖の種類も培養温度によって異なるという結果が得られた。しかしながらこの結果で最も注意すべきはMRS培地や乳を使って評価しているところである。培地や原料由来の多糖の影響を確実に受ける上、乳酸菌が生成した多糖と培地や原料由来の分解されずに残った多糖量を合わせた結果となるため、評価は慎重にしなくてはならない。同じ注意は論文3にも該当する。論文3は培養の炭素源をグルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロースとして生成される多糖量や多糖の単糖構成を評価しているが、これもMRS培地を使用しているため、特に単糖構成については慎重に評価する必要がある。しかしながら、異なる炭素源を用いることで生成される多糖量に変化があることは確かめられるので、量的な変化と質的な変化が同時に起こっているかは更なる研究が必要であると考えられる。

論文2では同じようにMRS培地を使用しているものの、Leuconostoc mesenteroidesが生成した多糖がグルコースのみを構成糖とするデキストランであったことから、データの解釈を可能にしている。MRS培地に含まれているであろうマンノースがまったく検出されないことから、L. mesenteroidesはマンノースを積極的に資化できるのであろう。また、炭素源にグルコースではなく、スクロースを使用していることが何らかの影響を与えている可能性が想定される。

これらの研究はEPSの産業応用における重要性を背景としており、食品産業への応用だけでなく、ヘルスケア産業への応用も期待されている。同時に乳酸菌が作るEPSのバリエーションが極めて多様であることから、これまでにない機能を有する多糖を見つけられる可能性が高く、ますます盛んに研究が行われるだろう。

 

以下は論文をまとめるためのメモ

1. ケフィアから単離したLacticaseibacillus paracaseiがMRS中に分泌する多糖量が温度依存的なので、温度の影響をどのくらい受けるのかを乳を使って調べたもの。

多糖の食品としての機能としては粘性を高めること、離水性を下げること、乳化を安定させることがある。

乳酸菌が作る多糖には細胞表面とゆるく結合している菌体外多糖と、細胞表面と硬く結合している莢膜多糖の2種類がある。EPSを作る乳酸菌はプロバイオティクスとしての働きが期待できて、腸内の免疫細胞との相互作用をもたらす例が多く報告されている。腸内環境を整えたり、免疫調整、抗腫瘍、コレステロールレベルの抑制なども報告あり。

この研究の対象としているL. paracasei CIDCA 8839と83124は腸内細菌叢を調整してプロピオン酸や酪酸の生成を増やすことがvitroの実験で確かめられている。あとはMRS培地で培養すると、生成されるEPSの量が温度依存的になるということがわかっている。重合度も変化する。

MRS培地で培養する時に好気的に培養するんだな。

ケフィアを作る牛乳は低脂肪乳なんだ。発酵の完了はpHが4.0以下になることを指標としているけど、そんなところまで発酵させる必要あるんだろうか・・・?

発酵乳中の多糖について、発酵温度が低い方が分子量が大きい多糖が多くできる、という結果。pHが4.0を下回ったサンプリングポイントのもので比較しているのかなという感じだけど発酵時間も長くなっちゃうし、評価は難しいところ。CIDCA83124株が明確な差を出している。単に培地由来多糖を分解する菌体外酵素の働きが弱かった、とかそういうことだったりして。

単糖構成はガラクトースとラムノースが多数。グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、というところだけど、乳が元々持っている多糖由来の単糖はどういう扱いになっているのかなと気になるところ。

温度によって生成される多糖の単糖構成が変わる初めての報告、ということだけど、たぶんMRS培地の多糖の影響を受けてるんじゃないかなぁ。どうだろう。乳中の多糖についても、乳由来の多糖の影響を受けてると思うんだよなぁ。

全体的にちょっと実験の設計が上手くないような気がしてるけど。どうだろう。

 

2. ナス科の植物ぺピーノから単離したLeuconostoc mesenteroidesの菌体外多糖について。RSG7株が作る多糖はデキストランだった。デキストランはグルコースを単一のモノマーとする多糖。homopolysaccharide。乳化能が高い。

多糖を作る生物は乳酸菌だけに限らず、酵母や藻類、真菌、苔、植物、動物など様々。

多糖の機能としては物性変化とヘルスケア。ヘルスケアの方は抗酸化、免疫調整、抗がん、抗凝血剤、抗ウイルス、抗コレステロールなどが報告されている。結構あるな。

homopolysaccharideを作る乳酸菌としてはApilactobacillus kunkeeiの詳細報告がある。一般的にLactobacillus, Leuconostoc, Pediococcus, Streptococcus, Weissellaで作るという報告がある。その中でもLeuconostocが主要なhomopolysaccharideを作る属として知られている。

EPS生成評価で使用しているのはMRS培地に5%スクローススクロースを使うあたりに何かあるのか?MRS培地の培養上清をそのままEPS抽出に持って行ってるわりにグルコースしかモノマーとして出てこないっていうのがちょっと不思議だけど、相当な量の多糖が生成されているのかもしれないね。

乳化作用が高い、ということだけど、コントロールのデータがないので、何と比較して「高い」のかがちょっとわかりにくい。

この多糖はスキムミルクを凝固する能力が高いこと、乳酸菌やビフィズス菌の生育促進作用が認められた。メカニズムは今のところわからない。MS, NMRとIR-FTを駆使して構造を決めたところはすごい。

 

3. L.plantarumで炭素源がスクロースだと多糖生成量が増えるという知見がある。C源を変えると生成量だけではなくて、構造とか与える物性も変わるんじゃないかという推測。L. bulgaricusはヨーグルト製造に、L. paracaseiとL. rhamnosusはチーズの熟成に関与しているのでこれらを研究対象とするのがいいだろう、ということ。C源はフルクトース、グルコースラクトース、マルトース、スクロースをチョイス。これらは野菜や乳には入っているC源だよな。5%で添加。結構濃いな。本培養はmMRS。肉エキスはなし。ペプトンと酵母抽出物が増量されているな。

やっぱりMRS培養上清をそのまま使うっていうのはちょっとどうかなって思う。特にペプトンや酵母エキスをどっちゃり入れているものだと培地の影響を受けちゃうんじゃないかなぁ。。。まあ、その辺を差し引いたとしても、C源で生成される多糖量が変わるというのは意味がありそう。スクロースだと増えるんじゃなかったか?種によって反応はまちまち、ということか。作る多糖が必要とする単糖が違うから、それによってできる多糖量が変わるのは納得。多糖の単糖構成の結果はちょっと解釈が難しい。MRS培地由来の多糖も含まれているはずなので(特にマンノースはMRS由来だと思う)、これを踏まえた考察はちょっと額面通りには受け取れないかなぁ。生成された多糖量と元々あった多糖のうち、分解されなかった多糖量の合計になるから、ちょっとどうかなぁ。。。

乳酸菌は栄養要求性が高いのでどうしてもMRS培地を使いたくなっちゃうんだけど、ペプトンや酵母抽出物、肉エキスには多糖が含まれているので、MRSを使った場合にできる評価項目は少なくなってしまうよね。